アジア太平洋地域のスキンケア市場における「健康寿命」の新たな可能性

 

2021年には、65歳以上の高齢者が世界で7億6100万人に達し、2050年までにこの数字は大幅に増加すると予測されています。国連のデータによれば、2050年には世界の6人に1人が65歳以上になる見込みです。ベビーブーマー世代が退職年齢に差し掛かる中、健康的な見た目やライフスタイルへの関心がますます高まっていることが、ミンテルの2024年「世界のビューティー&パーソナルケアトレンド」の一つである「NeuroGlow(神経から輝く)」でも指摘されています。


平均寿命の延伸に伴い、健康的な老化をサポートする機能的な解決策への需要が増加しています。消費者は予防的なスキンケアに目を向け始め、肌ダメージが現れる前に対処できる製品を選ぶ傾向が強まっています。

 

グローバルなスキンケア市場での「健康寿命」を軸としたチャンス


各企業は、包括的なウェルネスの概念とテクノロジーの進化を組み合わせることで、この「健康寿命」を意識した市場に参入できます。長寿研究の進展により、バイオハッキングや細胞再生といった、老化の根本原因にアプローチする革新が進んでいます。注目すべき進展のひとつとして、髪や肌の再生に効果が期待される「エクソソーム」の活用が挙げられます。

「スローエイジング」といった用語は、老化を否定的に捉えるのではなく、健康的で自然な美を受け入れる美に対する哲学を表しています。消費者は、いわゆる「若さの泉」を追い求めるのではなく、レチノールやビタミンC、ペプチド、セラミドといった成分を重視した製品を求め、肌の活力をあらゆる段階で向上させることを目指しています。ミンテルの調査によると、中国では敏感肌を持つ消費者の34%が「レチノールについて聞いたことがある」、もしくは「レチノールが主要成分として含まれる製品を購入した経験がある」と答えています。

健康的な加齢は、スキンケアだけでなく、栄養、運動、ストレス管理といった多面的なアプローチを含みます。これからのアンチエイジングは、炎症や酸化ストレス、DNA損傷といった特定の要因に対処する段階へ進むでしょう。ブランドにとって、バイオミメティック成分や個々の肌ニーズに基づいた個人個人に合わせたソリューションを探ることが鍵となります。

また、消費者は肌の健康と心の健康を同時にケアできる製品を求める傾向が強まっています。たとえば、インドネシアでは67%の消費者が「見た目が良くなることで自信が高まる」と答えています。韓国では睡眠の質を向上させる製品が登場し、日本ではストレス軽減を目的としたスキンケアが注目されています。

 

急成長する「ダーマコスメティクス」市場


化粧品と皮膚科学の境界を埋めるダーマコスメティクス市場も急成長を見せています。このカテゴリーでは、高濃度の成分と先進技術による製品効果が、新しいラグジュアリースキンケアの定義となっています。ミンテルの調査によると、インドでは46%の消費者がダーマコスメティクスを「肌の健康と見た目を改善する製品」として捉えています。2020年から2024年にかけて、インド市場では「皮膚科医テスト済み」の製品の発売が増加しました。また、タイでは半数以上の消費者がダーマコスメティクスブランドのサンケア製品を使用しています。

アジア太平洋地域、特に中国、タイ、韓国において、美容整形が受け入れられつつあることも注目に値します。韓国では、消費者の半数が非侵襲的な施術を外見を向上させるための許容できる方法とみなしています。中国では、美容整形を受けていない消費者の47%がアンチエイジング目的で美容整形を受ける予定だと回答しています。

 

若年層へのスキンケア教育とマーケティング戦略


若年層に対するフェイシャルスキンケアの教育も、長期的な肌の健康にとって重要です。各企業は、中高生が自分の肌タイプを理解し、早期から健全なスキンケア習慣を築けるよう支援する役割を担うことができます。また、SNSは消費者とのエンゲージメントを強化する強力なツールとして引き続き活用されるでしょう。インフルエンサーや皮膚科医とのコラボレーションにより、ブランド認知度やロイヤルティを高めることが可能です。たとえば、「スキンスラッギング」のようなトレンドを活用することで、男性消費者とのつながりを深めることができます。

 

ミンテルがブランドの成功をサポート


平均寿命が延びる中、アジア太平洋地域のスキンケア市場は、アンチエイジング製品を超えた新たな時代を迎えつつあります。科学的に実証された成分の効果を強調することで、単なる「流行の成分」を追い求めるのではなく、消費者の心に響くメッセージを届けることが重要です。

成長を続けるダーマコスメティクス市場は、より幅広い消費者層に向けた特化型処方の開発を可能にします。これらのトレンドが進化する中、スキンケアとウェルネス、心の健康、さらには美容施術を統合するホリスティックなアプローチを提供するブランドが、この健康寿命を意識した市場で成功を収めるでしょう。消費者が各ライフステージで自分の肌についてより良い意思決定ができるよう支援することが、成功の鍵となります。

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